昨年のいつ頃だったか、自分が現在勤めている会社の隣のオフィスに、自分が以前勤めていた会社と全く同じ名前の会社が入居してきました。

自分が元勤めていた会社は主にモノづくりをする会社だったのですが、隣に越してきたのは「このビルの管理をしている会社」だという話を人づてに聞いて、同名の別会社なのだと認識しました。
エレベーターホールに有る各階の会社名一覧には、今通っている会社と以前通っていた会社の二つの名前が並んでいるのですが、それはちょっと不思議な気分です。

隣の会社の一人の方と、たまに朝顔を合わせて挨拶や二言三言会話をするようになりました。
穏やかそうだけど気さくな方で、どことなく雰囲気が”所さんの目がテン!”に出演されていた矢野明仁さんに似ています。短い期間だけどなんとなく自分の頭の記憶に強く印象付けられた感じがしました。

そんな一見なんでも無い様な事が続いた先週末の事、見覚えのあるロゴマーク&作業着の人達がその部屋に入っていくのを見たのです。その時、以前から自分の中にあった「隣の会社は自分が昔勤めていた会社かもしれない」という極微量な可能性が、九割九分の確信へと大きく転換したのです。


また朝にでもタイミングが合った時に自分が元社員である事を伝えたいと思ったのですが、自分の曖昧な記憶ではきちんと伝える事が難しそうです。僕が元居たその会社はグループ会社が何社か有る為、お互い他の会社に誰が居るかなど知らないので、僕が少ない情報をお伝えしても「へー。そうなんですか。」で終わる可能性が高いのです。
どうすれば確実で豊富な情報を伝えられるか悩んだのですが、昔の自分の名刺をいまだに持っている事をふと思い出しました。名刺なら様々な情報が入っていますし、信ぴょう性が非常に高いので相手の方が記憶を何とか掘り出そうとしてくれる可能性が高まるはずです。

そう思って名刺を奥から取り出していた時、ふとある事に気づきました。
「もしかしてあの方、僕が最終面接を受けた時に部屋へ誘導して下さった方ではなかろうか。」
親しみ深い方という印象が強く残っていたのですが、それは有名人の方に雰囲気が似ているからだと思っていたのですが、「もしかすると以前にお会いしている方だからなのかもしれない。」そう思った時「そんな事があるのか。」と、少し心臓が高鳴りました。


良いタイミングは今日突然やってきました。帰りがけにトイレに入ったらその方が偶然居らっしゃったので、用を済ませて出ようとした所を呼び止めました。

まずはその会社がビルの管理業務以外に製造業も行っている事を確認し、確信度を十割にした所で自分が元社員である事をお伝えしました。
あらかじめ準備していた名刺をお渡しすると「あっ覚えてるかも」と声を出されたので「もしかして面接のときに…」と返すと「採用したわ」と返事されました。

それからの話は「元気で何より」とか「どなたがご健在」などの良くある内容で、残念ながら共通の思い出というものがあまり無かったので話が尽きないという事も無かったのですが、自分の元上司の方がグループ会社の社長になられたりとか、とても有能だった先輩が某有名企業へステップアップされた話も聞けてとても有意義なものでした。


自分が就職した時から含めると二十年近く前の話で、所在地も県単位で違っている会社の、自分の採用に関与していた方が、とあるビルの同じフロアに引っ越してきて再開する。こんな事があるんですね。
自分はとてもアクティブだとは言えない性格ですけども、多少は社会に出て多少は活動してきた結果、いつのまにか何らかの種を蒔いていたという事なのでしょう。今回の事は”花が咲く”という様な事ではないかもですけど、「何かをしていれば意外と何らかの結果が返ってくる」という事の証明の様な気がして、驚きと共に何かを得たような気がしました。